第1回「この電子書籍がすごい!」大賞(愛(セックス)と正義の物語(セックスしよう!)編)
さあやってまいりました。
「この電子書籍がすごい!」大賞のお時間です。
なんじゃそれ、と思われるかもしれませんが「この電子書籍がすごい!」大賞は、ふだん全然読書しない寡作ならぬ寡読なサドさんが読了した数少ない電子書籍の中から感銘を受けた作品をノミネートする賞です。ただのレビューです。
ぶっちゃけT島社さんが電子書籍に目をつけたときSEOのノイズにしかならないと思いますが気にしない。
はい。というわけで。
記念すべき第1回の受賞はこちらの作品です。
作品名「コヲロコヲロ」(LIBERTYWORKS)※電子書籍のみ。
著者は永元千尋(@libertyworks_cy)さん。
この作品がどんな事情で電子書籍として出版されたのかについては電書ちゃんがまとめてくれているので興味がある方はご一読ください。購買意欲が刺激されると思うのでここにリンクを貼っておきます。
【みんなの悩み相談室】「君のこと、見限るからね?」 出版社と物別れとなった冒険活劇『コヲロコヲロ』は本当に面白いの? - 電書ちゃんねるプラス
賞と名はついていますが、ここでやることは単純な褒めレビューです。
「この電子書籍がすごい!」大賞は基本的に褒め殺しでいこうと思います。
では前置きが長くなりましたがいきます。
(この先は作品を読んだ前提です。ネタバレを多分に含みます)
最後まで読める!
いきなり当たり前のことを、と思われるかもしれませんが、中・短編の作品帯が厚い電子書籍で文庫500ページ越えは、ほとんどの人が躊躇する要因だと思います。 #いいか、褒め殺せよ!
でもこれ、駆け出しライターの僕が気軽にレビューしていいレベルの作品じゃないんですよ。間違いなく傑作であり『もっと評価されるべき』作品です。
「長くても問題なく読めますよ!」と喧伝するのがこのレビューの目的であり目標でもあります。
読了した人間が太鼓判を押せば、新規読者さんにも安心して買ってもらえる気がします。(どうせなのでAmazonにも同様のレビューを書きたいと思います)
もちろん長くPCモニタで読んでいると目が疲れますが、そこは適度に休みましょう。僕は面白くて休めませんでしたけどね(ドヤ)
愛(セックス)と正義の物語(セックスしよう!)
大事なことなので2回言いました。
タイトル「コヲロコヲロ」は古事記でイザナギとイザナミが国を作るときに歌う言葉なのだそうです。Amazonの内容紹介にもあるように、3000年の時をかける壮大な愛の物語と、日本という国・そこに住まうすべての人々を励ますような作者からのメッセージが物語を通して伝わってきます。(父子の絆が描かれることに関しては上記の電書ちゃんのTogetterを読む限りいろいろ反対もあったようですが……)
また永元さんの特撮好きはTwitterで公言されているとおりですが、本作は特撮ヒーローの系譜に対する情熱をひしひしと感じます。
とくに序盤は仮面ライダー(昭和)のオマージュが分かると楽しいです。幼稚園バスのくだりでは笑うよりもそういう使い方があったのか!と膝を打ちました。
作中「ここで変身!」と思いたくなる場面が何度も出てきたりします。(記憶継承ヒーロー(転生って書けたら楽なのにw)という『魔法』を立たせるために、変身ヒーローという別の『魔法』をあえて使わないことは重々承知の上で――)
中盤からの流れはライダーというよりは、主人公が変身しない『ミュートスノート戦記(麻生俊平著・富士見ファンタジア文庫)』というべき重厚な展開に…と言っても今の高校生には通じない可能性が高いですが、全5冊分を1冊に凝縮した感じ。他作品を引き合いに出したのは、その作品を知っていてそれが好きなら、コヲロを読んで損はしないという意図を込めてのものです。いやはや、すごい情報量と熱量です。
熱といえば、ページを開いたときの文字の『圧』もすごい。
最初の話題に戻るようですみませんけど、画面いっぱいに文字が埋まることもあります。でも語り口は軽妙で、情報に無駄がないので読み手にストレスを感じさせません。スピード感のある読み味、ひたすら文章を追っていくことで主人公の感情にサーフィンすることになる文章。
もちろんその膨大な熱量ゆえ、さらっと読み飛ばすことは基本的にできません。それだけ強い『正義』への問いかけが込められている『読むに値する文章』だと思います。
どのへんが読むに値するかは個人の判断ですが、
「(略)今すぐセックスしよう! セックスー!! 朝が来るまで腰が抜けるまで何度も何度もヤってヤってやりまくるぞぉーっ!!」
のくだりは何度読んでも泣けます。
嘘です。
あ、引用した文は本物ですよ。実際は本当に真面目な愛と正義のお話です。
(貴様茶渡、なぜネタに走った)
電書特有の挿絵効果
何気にポイントが高いのが『挿絵のタイミングが抜群』なところです。
普通なら読者に媚びて女の子のあんなシーンやこんなシーンを挿絵に持ってくるんだろうと思いますが、この作品の挿絵は徹頭徹尾、作品のためにある感じがします。なぜなら物語の盛り上がりと挿絵のタイミングが完璧です。
電子書籍では画像配置の関係でページをめくるまで挿絵が見えないことが多いのですが、これは電子書籍の良いところだと思っています。
来るぞ来るぞ…、と盛り上がったところでバーン!と挿絵が挟まれる。これは一種のカタルシス体験ではないかと。そうした類の挿絵だとインパクトも大きい。(もっとも画面の大きさで一度に表示される文字数が変わるので再現性が高いとは言えませんが)
とくに戦いのクライマックスに来る挿絵。あの主人公の顔が……。
あ、これは直接読んでみてくださいね。
さて、どうでしたでしょうか。
少しでも「読んでみたい!」と思っていただけましたでしょうか。
そして、電子書籍を出版なさった皆さんもこれから電子書籍を出す予定の皆さんも純粋読者の皆さんも、褒め殺しレビューを書くことをお勧めします。
ここはこうした方がいいという提案もまた必要ですが、叱責する上司はプリキュアの幹部だけで十分です。
作者が嬉しがるレビューをペイフォワードできたら素敵だなって思います。
ということで「この電子書籍がすごい!」大賞、第1回でした。
第2回の予定は未定です!!
では(*'ω'*)