ラフダイヤモンドとヒーローズ・ジャーニー
物語の法則
※ラフダイヤモンド20話より。
そうです、今日はヒーローズ・ジャーニーの話をします。
みなさん聞いたことありますか? ヒーローズ・ジャーニーとは――
あ、もう高槻先生(主人公。眼鏡のキャラ)に言われてしまってるじゃないか。
言われてしまったし、説明もされているので、あとはラフダイヤモンド20話を読んでください。はい、ヒーローズ・ジャーニーの話、終わり!
……嘘です。続けます。
昨今、漫画・小説・ゲームなどクリエイターや業界そのものを舞台とした作品が増えています。これらの現象が意味するものは、その業界に興味のある人たちが増えているということです。
そんな『業界もの』作品に、緒方てい先生の「ラフダイヤモンド」があります。
業界ものではありますが、注目すべきはそのハウツー本としての側面です。
同じ20話では、こんな会話がなされます。
あきら「『ヒーローズ・ジャーニー』なんて初めて聞いたわ。なんとなく感覚的には分かってたんやけど」
高槻「そうか? 割と基本だぞ?」
この瞬間、僕の中では2つの感情が芽生えていました。
「ヒーローズ・ジャーニーのことを教えてくれるなんてこの漫画は神か」
「っていうか割と基本だったの!?」
初心者ほど創作論とか技術を毛嫌いして「俺だけのオリジナルを描くんだ!」と燃えがちです。こういう理論は決してマイナスにならないので心を柔らかくして受け入れてみることが大事で――という話はまあ置いといて。
「ヒーローズ・ジャーニー」は、米国の神話学者であるジョーゼフ・キャンベルが、世界中の神話のストーリー展開に共通パターンがあることを発見し、それを紹介したものです。
ジョージ・ルーカスが『スターウォーズ』の制作にヒーローズ・ジャーニーの構想を取り入れたことは広く知られています(いるそうです)。
ですが、こうして漫画で取り上げられること自体珍しいことだと思います。 そしてこういう情報をきちんと教えてくれる漫画はすごい。
この「ヒーローズ・ジャーニー」がどのように使われ、創作においてどんな有効性があるのかは、ラフダイヤモンド20話を読めば1発で分かります。今ならジャンプ+のサイトから1話と14話~最終話まで無料で読めます。そして感謝の意を込めて単行本を買うのじゃ。
緒方てい先生といえば、電子書籍の話題ではこちら記事も印象深いと思います。
ヒーローズ・ジャーニーの進化
さて、漫画で紹介されているジョーゼフ・キャンベルのヒーローズ・ジャーニーは8つのステージから構成されています。
なぜこれが漫画学校の話で出てくるのか?
それは古代から受け継がれてきたストーリーの構造が、人間にとって本質的に『面白い』ものだからです。
このステージさえ押さえておけば創作における面白さは保証される。逆にいえば、面白い作品・人気のある作品は間違いなくこのステージを押さえている。
上の会話であきら(画像には出てないけど漫画家の幽霊♀)が「感覚的には分かってたんやけど」と言っているのは、面白い作品を作り出せる人はこのステージが感覚的に身についているのです。
もちろん感覚で身についていない人でも、勉強で身につけることが可能です。
キャンベル氏は1904年生まれ。神話構造を論じた『千の顔を持つ英雄』は49年、最高傑作といわれる『神の仮面』を書き始めたのは56年です。
いくら物語の基本は2000年以上前から変わっていないとしても、さすがに創作技術論はブラッシュアップなり応用理論なりが登場します。
ここでブラッシュアップ版の12のステージからなる「ヒーローズ・ジャーニー」を紹介するのはあまりに余白が足りず、なにより僕がめんどくさいので、それが書かれている教本を紹介しておきたいと思います。
クリストファー・ボグラーの『神話の法則』と『物語の法則』です。
- 作者: クリストファー・ボグラー,デイビッド・マッケナ,府川由美恵
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紹介しておいてなんですが『神話の法則』はプレミア付きでけっこうなお値段なので、とりあえず『物語の法則』だけ押さえておけば大丈夫じゃないかなと思います。
ちなみに『物語の法則』も2000円(税抜)しますけど。
注意点としては、ボグラー氏の担当部分がわりと格調高い文章なので、人によっては読みにくいと感じるかもしれません。シナリオ創作術は人によって向き不向きがあるので、いろいろな教本を読み比べるのが正解だと思います。
また高いお金を出して買うわけですから、読んでイケると思ったら、その技術が身につくまで諦めずがんばってみてください。(ブーメランだ逃げろ)
とにかく1冊読んで、実際にその理論に基づいて書いてみることです。これが一番の『身につける』方法です。マジです!
では今日はこんなところで。
みなさん良い創作ライフを!