冷静と情熱とクマのあいだ:『彼とは石の疎通ができない』感想
稀さんのKDP新作短編『彼とは石の疎通ができない』を読みました。
KDPで2作目の短編を出しました。 『彼とは石の疎通ができない』 石マニアの男と普通の女と野生のクマが三すくみする話です。 …自分でも何言ってるかわからないな。 https://t.co/tceoUuJxbx #電子書籍 #KDP pic.twitter.com/Yn3X8FRwmM
— 稀 (@mare_mode) 2016, 1月 23
すっきりまとまっていて、読後感も爽やか。
大学生の(ちょっと冴えない)日常から、童話的なすこし不思議な展開。
世界おはなし名作全集8巻収録の「バーバ・ヤガー」を思い出しました。
Wikiで調べたら「バーバ・ヤーガ(ママ)」の項目に該当するエピソードがなかったので、ここは日本人らしく「三枚のお札」と言ったほうがいいかもしれません。
難しい言葉で「呪術的逃走譚」というらしいです。今調べて知りました。
ちなみに僕は「三枚のお札」という民話を知らなかったので、マジックアイテムを投げて魔物から逃げる話の原記憶は「バーバ・ヤガー」です。(どうでもええ)
ともあれ、こういう短編が書けるっていいなぁと僕は思ってしまいます。
作中に出てくる魔法の石の魔法具合も、がんばれば見つかりそうなバランスがいいですね。
ところで僕も、頭が良くなって痩せて恋人ができて宝くじに当たる魔法の石を持っているんですが、誰か買いません?
特別価格10000円。限定300個!
お問い合わせお待ちしてます!
神は全ての人類を嫌っている
SLAYERに「Disciple」という曲がある。
「世界に紛争を引き起こしテロリストを増長させる宗教」が曲のテーマだ。
収録されているのは『ゴッド・ヘイツ・アス・オール』(God Hates Us All)。
スレイヤーの8作目のスタジオアルバムで、アメリカン・レコーディングスより2001年にリリースされた。(参考:ウィキペディア「ゴッド・ヘイツ・アス・オール」)
この曲を強烈に脳裏に刻みつける歌詞こそ、アルバムタイトルにも使われている「God Hates Us All」だ。
神は俺たちを嫌っている、のである。
神は全ての人類を嫌っている。
人間社会を、競争社会を、制度社会を、格差社会を嫌っている。
この言葉の説得力。
神は私たちを救う(God Saves Us All)なんて言われても幻想しか感じない、しかしこちらはよっぽど信頼できるし、現実的な言葉だ。
神は私たちを救う存在などではない。私たちの全てを嫌っており、常に苦難を押し付けてくる。だからこんなに苦しいのだ。苦しくて当たり前なのだ。
トム・アラヤが叫ぶ。
「なぜ祈りが届かないのか教えてやろう。神は人類を嫌っているからだ!」
素晴らしい解答だと思った。
そして同時に、こんなフレーズに素直に共感してしまうくらい今の自分は現状に怒ってるんだなとも思った。
さて、SLAYERはBIG4と呼ばれる4大スラッシュメタルバンドの一つ。残りの3つはMETALLICA・MEGADETH・ANTHRAX。前回勉強したね!
前の記事はこの記事のための布石だったのだ!
キリストヘイトを撒き散らす敬虔なカトリック青年(を考えたらあんまりうまく行かなかった)
新しい公募用シナリオを書くにあたり、今回の主人公はキリスト教徒でいこうと考える。もちろん惰性で教会に通ってるだけのにわかクリスチャンだ。あらすじは今回の記事に必要ないので割愛する。
さて主人公を決めたらキャラ付けが必要だ。
そもそも日本人にとってキリスト教徒は非日常の存在だからいいんだけど、ぬるま湯みたいなキャラを作る気もないので、キリスト教徒からもっとも離れた感じの追加属性を考える。すると主人公の内部に葛藤を生みだすことができる。簡単にいえば「個性が生まれる」。これがキャラの深みになるのか、脚本の役に立つかどうかは置いておいて、ないよりはあった方がいいだろうくらいで捉えてもらえると嬉しい。
そこでデトロイト・メタル・シティのクラウザーさんみたいにしようと考えついた。
主人公の職業をブラックメタルバンドのボーカリストにするのである。
聞き慣れない言葉が出てきた。
個人的には、ヘヴィメタルってなんだ? からスタートである。
初心者のためのヘヴィメタル講座 その1 - YouTube によると、ヘヴィメタルは、ロックを激しくしたハードロックをさらに激しくしたもの。つまり、ロックを二段階進化させたものがヘヴィメタルになる、らしい。ブラックサバスから始まったヘヴィメタル朝が様々に枝分かれして、スラッシュメタルのBIG4朝(METALLICA・SLAYER・MEGADETH・ANTHRAX)がおこり、NIRVANA帝国の侵略によってメガデスとアンスラックス以外のメタルバンドが死滅する……。
って、ここまで書いて気づいた。
俺が知りたいのはクラウザーさんだ!
あのメイクをするのは何メタルなんだ!
目的を忘れるところだった。つい全部見てしまった。動画、面白いです。ちなみに動画主のバンド「ツインテール」は車上荒らしでアンプを盗まれてしまい公式サイトで情報提供求めています。
さてWikiでDMC(デトロイト・メタル・シティ)について調べる。漫画を買うお金はないので集合知の力でねじ伏せる。
すると出てきたのがブラックメタルというジャンルである。
DMC自体はデスメタルに属しているが、あの白塗り黒目の『土葬メイク』を施すのは正確にはブラックメタルである。らしい。
ではブラックメタルについて調べる。
反キリスト的な記事が見つかれば儲けモンだ。
その結果。
ブラックメタルの名のもとに起きた衝撃的な10の事件 : カラパイア
あった。
初心者のためのヘヴィメタル講座でも「この人達はテロリストです!」と言われているように、教会燃やしたり極右だったり拷問したり殺したりと、やばい、あ、これほんまあかん人たちや。(※過激なのは一部のバンドだけです)
まあ実際に書きたいのは、仕事で「反キリスト」をやっているキリスト教徒なので、主人公の属性としてはこれ以上ない素材を見つけたことになる。
あとはこれをきちんとテーマに沿って書いていけば、原稿は完成します。(それがまためんどい)
・蛇足
「僕はこんな音楽やりたくないけど、仕事だから仕方がない」みたいなストレートすぎる展開にするのも考えた。
でもそれ、好きでブラックメタルやってる人たちに大変失礼である。なので主人公はキリストヘイトを撒き散らす敬虔なカトリック青年というキャラになった。個人的に気に入る設定になってくれた。ただ書きあげた原稿を見ると、字面ほど面白いキャラクターにはなっていない気もする。当たり前かもしれない。だって主人公だから。主人公がキリストヘイトを撒き散らすのはあくまでライブシーンだけ。日常パートではいたって普通の青年。主人公は視聴者の身代わり。一般の枠から外れることはできないのが前提だ。まあ、その枠の中ではそこそこ面白くかけた気がする……気がする、うん。
ブラックメタルの中でもキリスト教を受容した「アンブラックメタル」もあるらしいが、それを採用するとテーマが迷子になるだろうと思って今回は外している。